What should I eat|最適化された食事

昔からよく聞かれる質問の一つが「なに食べたらいいんですかね?」です。

そして、僕は昔から変わらず「好きなものを食べればいいんじゃないですか?」とだけ答えます。すると、ニコッと笑って少し拍子抜けしたような表情をする方がほとんどです。というのも「そうですよね…」と感じつつも、心の片隅では「もっと有益な情報」が欲しいと思っているからだと思います。

有益な情報とは、食事の頻度や回数、タイミング、具体的な食材、PFCバランス(タンパク質・脂質・炭水化物の比率)などのことでしょう。プロならきっとそういう内容を教えてくれるに違いない、自分にとって最適な食事内容をカスタマイズしてくれるに違いない、と思うのは自然なことです。

残念ながら(?)僕はそうしたアドバイスはしません。というより、しないようにしています。

「好きなものを食べることが、その人に最適化された食生活」というのが僕の考えだからです。

先日、阿部寛さん主演のテルマエロマエという映画を見ました。古代ローマ人が現代の日本にタイムスリップし、そこで出会った日本の風呂文化に感動し、古代ローマの浴場の発展に活かしていく、という映画です。内容も面白いのですが、一番印象に残ったのが、お風呂はとても神聖であり癒しの時間である、と力強く主張していたこと。

食事もまさにこれだな、と感じました。食事はとても神聖な時間であり、癒しであり、私たちに元気と喜び、そして笑顔を与えてくれる時間なわけです。そんな貴重な時間を「ガチガチな内容で固めていいのか?」と思うのです。これが病気療養中の方であればまた話は変わってきますが、ほとんどがそうではないはず。

ダイエット、ボディメイクの話題になると、今日から炭水化物をカットし、その代わりに鶏肉やブロッコリー、トマトを中心とした、まるでボディビルの減量期のような食生活に切り替える方が多いようです。今だとSNSやYouTubeの影響が強いでしょう。韓国アイドルやインフルエンサー、コンテストに出るような方々の食生活を参考にするケースが多いかと思います。あたかもそれを食べなければ痩せられないかのように。

留意すべき点が、我々はあくまで一般人であることを忘れてはならないことです。一般人というと少々聞こえが悪いですが、つまりアイドルでもなければ、インフルエンサーでもコンテスト出場者でもないということ。彼女たちのようにファンのためにステージに立ち、多くの人に影響を与え、それによって生計を立てているわけでもありません。仕事で疲れたからジム休もう、好きなもの食べて寝よう、一杯だけならいいか、などと言ってられるはずもなく。

なので、彼女たちのようなストイックな食生活を真似れば一時的には効果を生むかもしれませんが、ほぼ挫折します。特に期間を決めるダイエットがその典型です。2ヶ月だけなら頑張れたとしても、その後、リバウンドするケースがほとんどです。さらにコンテストに出るような人たちにはオフシーズンがありますが、一般の人たちにはそうした概念はありません。

世の中情報に溢れていますが、”プロ向けの情報”と”一般人向けの情報”がごっちゃになってしまっているのが現状だと考えています。そして、参考になるようで参考にならない(してはいけない)のが、他人の食生活です。それはあくまでその人にとって最適化された食生活であって、自分にもそれが当てはまるとは限らないからです。運動している人へのタブーワードに「なにを目指してるの?」がありますが(放っておいて!と思われるから)、それこそなにを目指してるのか、という話になります。

今、あなたが考えるべきなのは、2ヶ月後に自分がどうなっていたいのかよりも、2年後、10年後、20年後に自分がどうなっていたいかということです。2ヶ月でさえハードです。そんな生活を果たして挫折することなく何十年と続けていけるのか。

他人の食生活がどうこうではなく、これは自分の問題です。自分の食生活をいかに自分に最適化していくか。その答えを握っているのは、プロではなく、やはり自分しかいないのです。

「好きなものを食べることが、その人に最適化された食生活」

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