「駅の階段を上るだけで疲れる」というセリフがあります。
通常、思い当たる原因としては”運動不足”が挙げられると思いますが、本当に運動不足だから疲れるのでしょうか。もちろんそういう人も多いでしょうが、そう決めるには早過ぎると考えています。
というのも、他に問題があるからです。
それが「そもそも上るスピードが速すぎる」ということ。早朝のラッシュ時なのかそうでないのか状況にもよりますが、ほとんどの人が「平地とほぼ変わらない速度」で上っていることが多いのです。
駅などの公共施設の階段は、一段の高さが約16㎝、奥行きが約30㎝と決められています。傾斜は約50〜60%(約30度)です。30度の傾斜というのは、登山で考えると最もキツい部類に入ります。日本三大急登の一つである北アルプスのブナ立尾根でさえ約23度なので、私たちはそれよりもキツい階段をスタスタと登っているのです。
ちなみに、駅の階段は平均30〜40段(5〜6m)ほどあり、通常20〜30秒ほどで登り切る人が多いようです。1時間当たりに換算すると、約700〜900m上昇していることになります。急ぎ足の人では1,000m/hを越える場合もあるそうです。登山で推奨されているペースが1時間に300〜400mなので、約2 ~ 3倍の速度で駅の階段を上っていることになります。
そう、息が上がって当たり前なんですね。決して運動不足ではないのです。どうしてそんな速い速度で上れてしまうのかというと、駅の階段はせいぜい30〜40段ほどだからです。もしこれが山登りだったり、地下鉄の駅のような数百段ある階段では通用しません。
解決策としては、階段を上る速度を「平地を歩く速度の半分」にしてみてください。そうすれば多少息は上がったとしても、だいぶマシに感じるはずです。かなりゆっくりに感じますが、本来はそのくらいのスピードで上るべきだということです。
なぜこんなお話をするのかと言えば、ラクに階段を上る方法をお伝えしたいからではなく、まずは「当たり前だと思っていること」を見直してみてほしいからです。そして「なんでも力づくで解決してほしくないから」です。
運動不足ですね、もう少し運動しましょう。と言うのは誰にでもできます。けれどもう少し視野を広げてみると、効率の良い体の使い方であったり、上る速度を見直してみるといった新たな発見があるはずなのです。
まわりのスピードが当たり前だと思わず、自分のペースで歩んでみてください。なんでも。