Maintenance|ダイエットとピラティスの相性

マシンピラティスの消費カロリーは1時間あたり約200kcalと少なく、さらに週に何回も通うわけではないのでダイエット効果はほぼ期待できない、というなんとも絶望的なことを前回の記事でお話しました。

そもそも、ピラティスはダイエットのために開発された運動ではないからです。なので、誤解を招かないように、僕もダイエットを前面に出した発言は避けるようにしています。

しかしながら、ピラティスとダイエットの相性はとても良いというのが僕の考えでもあります。もし自分がダイエットをする立場でしたら必ずピラティスを取り入れますし、実際に普段の生活やアクティビティ(登山やトレイルラン、ロードバイクなど)、体型維持にもピラティスが役立っています。

では、なぜピラティスで痩せる人と痩せない人がいるのか。

答えは簡単です。痩せない人は「ピラティスに通えば痩せるんだ!」と考えているから。昔から、朝バナナダイエットやトマトダイエット、置き換えダイエット、◯時間食べないダイエット、呼吸ダイエットなど『これだけやれば痩せる』というダイエットは後を断ちません。

なぜ、次から次へと新しいダイエット法が現れては消えていくのか。簡単です。そのダイエット法が痩せないからです。だから、また次から次へと新しいダイエット法が現れるわけです。

筋トレやピラティスもそういう風潮に飲み込まれ、つい「これだけやれば痩せるんだ!」と考える人が増えてしまう。そして頑張っている割には結果が伴わないので辞めてしまう人がいるわけです。

これだけははっきりとお伝えしなければなりませんが、これだけやれば痩せる!なんてものは世の中には存在しません。真面目に身体作りに取り組んでいる人は、ジムやスタジオに通うだけではなく、食事や睡眠も同じくらい大切にしていますし、時間を作ってウォーキングやランニングもしていますし、電車通勤を辞めて自転車生活に切り替えるなど、「筋トレやピラティス以外の時間」も大切にしています。 

なので、お客様にも「通うだけで満足しないでくださいね」「スタジオの1時間より、他の23時間をどう過ごすかですからね」ということはお伝えしています。スタジオでお伝えしたことを、日常生活にどう活かしていくかが大切だからです。

スマホ時代の今、情報は切り取られた形で私たちに伝わってきますので『ピラティスをやれば痩せるんだ!』『こんな綺麗な体になるんだ!』とつい錯覚してしまうのです。

世の中そんなに甘くはありません。月に筋トレやピラティスを数回やっただけで痩せるわけがないのです。もしそれで痩せたという人がいるなら、元々そんなに食べない人か、それらがキッカケとなって普段の生活にも何かしらの健康的な変化があったという人です。

これをやれば痩せる!という夢を見たい気持ちは分かりますが、現実から目を背けてきた結果が今の状態なのですから、夢を見ている場合ではなく、きちんと厳しい現実に向き合わなければなりません。結局のところ、ダイエットはなにをやるかではなく『自分とどう向き合うか』だからです。

と、ここまでがマインドセットです。

では、本題です。なぜピラティスとダイエットの相性が良いのかお話していきます。

ダイエットには【整える x 動く】という式が重要だからです。ピラティスは元々リハビリとして開発された運動であると、前回お話しました。これはつまり「身体を本来あるべき状態に戻すこと」と言えます。

車の整備と同じです。ホイールは曲がっていないか、タイヤの空気圧は下がっていないか、エンジンオイルは古くなっていないか、ブレーキランプは点灯するかなどを細かく点検し、問題のある箇所を炙り出し、直していくことが必要です。

ここまでが【整える】という段階です。

そして、次が【動く】という段階になります。車は飾り物ではないので、実際に走らせなければなりません。

そして、車が走るにはガソリンが必要ですね。鋭い方はお気付きかと思いますが、ガソリンがちょうど「体脂肪」に当たります。体のあちこちについた体脂肪は熱量を持っていますので、運動中のエネルギーになります。なので、ウォーキングでもランニングでもエアロバイクでも、必ず体脂肪をエネルギーとして利用します。車と同じで動いた距離に応じて体脂肪(ガソリン)は消費されるのです。

ここから考えられることは、ピラティスだけしかしないということは、つまり『車の整備だけしかしない』ということです。たしかに車の状態は良くなりますが、走らせないことにはガソリンは使われません。なので、体の状態は良くなっても、日常的によく動いたり、自発的に有酸素運動を取り入れていかないと体脂肪は減っていきません(食事によるダイエットを勧めない理由については過去記事をご参照ください)。

ですので、ダイエットには【整える × 動く】という式が必要なのです。

では「動く」だけではダメなのでしょうか。

結論から言えば、おすすめはしません。これも車の例えになりますが、車を整備しないまま走らせるとどうなるか。

ホイールが曲がっている(足や骨盤が歪んでいる)、サスペンションが古くなっている(背骨が硬い)、ハンドルの動きが鈍くなっている(可動域が狭い)、潤滑油が切れている(身体がかたい)、ナビが更新されていない(思ったように身体が動かない)といった不具合があるかもしれないからです。

そのまま車を走らせると故障するのは時間の問題です。幸いにも、車には定期的にディーラーでの点検や車検がありますので、大きなトラブルは頻繁には起こりません。

ですが、自分の身体はどうでしょう。点検も車検もありません。もし悪い箇所があったとしても、騙し騙し動くか、そもそも不具合にも気付かずにそのまま動くことになります。実際に、反り腰や猫背、内股やガニ股、巻き肩の人は多いですね。

ピラティスは自動車の整備工場のようなもので、身体をきちんとメンテナンスする作業なのです。これが、きちんと体を整えてから動くことの重要性です。

片方のタイヤが曲がったまま走ることを想像してみてください。真っ直ぐに進まないどころか、どこかに負担がかかり、いずれ故障に繋がります。つまり、体を整えないまま運動するということは、疲れやすかったり、どこかに痛みが発生する可能性があるのです。

一番の目的がダイエットの場合、体が元気な人には、積極的にウォーキングをしたり、ランニングをしたりすることを勧めています。そうした日常生活よりもやや負荷の高い運動をした時にはトラブルが発生しやすいので、きちんと体を整えておく必要があります。

ただ、前回もお話したように『カロリーを消費する=痩せる』ではないことだけは忘れないようにしてください。いくらガソリンを使っても、それを上回る量のガソリンを注いでいては痩せませんから。ダイエットは『消費カロリー > 摂取カロリー』の状態を続ける必要があります。運動というのはあくまで消費カロリーを増やすための一つの手段にすぎず、動いたからといって痩せるわけではないのです。それでも動かないよりは動いたほうが精神衛生や健康維持のためにも良いので、たとえダイエットが目的でなくても運動することは大切です。

なお、「ピラティスはエクササイズではない」と、インストラクター養成校では教わりますので、前回と今回はダイエットに的を絞ってお話した結果、どうしても視野の狭い考え方になってしまったことをお赦しください(業界の方々から怒られそうなので)。あくまで一つの側面として考えていただければ幸いです。

目次