ピラティスは難しい?

「ピラティスは難しい」というセリフをよく耳にします。

僕がピラティスをはじめた頃、まったく同じことを感じました。

「こんなに細かいの?」「筋トレと全然動きが違う」「この動きはなんのためにあるの?」

そうしたことの連続でした。けれど、よく考えると、難しいのはピラティスに限った話ではないということです。

というのも、筋トレにしても、水泳にしても、ダンスにしても、ランニングにしても、どれもはじめは難しいはずだからです。きっと「形だけ」ならできてしまうでしょうし、自己流でなんとなく満足しているケースもあるかもしれないので、「ちゃんとやろう」と思ったらどの分野でもある程度は難しいはずなのです。

どんなことでも「自己流でやる」のと「教わってやる」のとでは大きな差があります。大切なことほど一朝一夕では上達しませんし、だからこそピラティスだけが特別だとは考えていません。なので、難しく感じることに対して抵抗を感じてほしくありませんし、うまくできないからと言って悲観もしてほしくありません。どんなことも練習の積み重ねです。

ピラティスは「自分の体に意識を向けること」を大切にしており、これが難しいと言われる最大の理由だと思います。

自分の体に意識を向ける?と言ってもなかなかピンとこないはず。というのも、そもそもそうした習慣がある人は少ないからです。

例えば、近くのコンビニまで歩くとします。頭の位置や肩甲骨の角度、骨盤の傾き、接地する足の向きなどを考える人はほとんどいません。そこまで細かくなくても「背中が丸まっていることに気付かない人」はたくさんいるはずです。

つまり、日頃から自分の体に意識を向ける習慣がないので、いざピラティスをはじめても難しく感じてしまうのです。逆に、日頃から自分の体に意識が向いている人ほど成長が早いのも事実です。

ピラティスの原則の一つに「Awareness(気付き)」があります。エクササイズに焦点が集まりがちなピラティスですが、その根幹には「自分の体の状態に気付きましょう」という教えがあります。

猫背や反り腰の人は多くいます。けれど、それよりも、猫背や反り腰であることに「気付いていないこと」が問題です。他にも、肩が凝っているのに「凝っていない」と答える人もいます。恐らく、この場合も日頃から体に意識を向ける習慣がないことが一因でしょう。

ですので、僕はよく「ピラティスは脳神経の回路を整備するワーク」「身体のセンサー感度を高めるワーク」といった表現を使っています。

身体を痛めてから気付くのでは遅いですし、痛みの発生よりも前に「警告ランプ」が点灯しているはずなのです。それに早く気付くことができるかどうか。インナーマッスルを鍛えることだったり、しなやかな筋肉をつけることだったり、ピラティスには様々な効果がありますが、それらはあくまで副次的な効果であり、まず大切なのは「自分の体に意識を向けること」だと考えています。

1時間のピラティスセッションで学んだことを、23時間のどこかで生かしていく。そんなピラティスにしていただければいいな、と感じています。

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