FOCUS|「2,600」という数字が意味するもの

エクササイズを行う時には、常に意識をその目的に完全に集中させなければならない。これは、求めた結果を得るためにきわめて重要である。

Joseph H. Pilates

タイトルの2,600回という数字は、私たちが一日にスマホに触る(タップする)回数、です。

10分に1回スマホを手に取っているというデータがあります。例えば、駅で電車を待っている時、ホームを見渡してみるとなかなか興味深い光景が広がっています。スマホを見ていない人を探すほうが難しいのです。日常の風景と化しているのでもはや違和感はありませんが、意識して観察してみると、ほとんどの人が下を向いてスマホを見ているのです。

これは決して批判してるわけではなく、それほどまでに社会の在り方が変化したということです。

先日、カフェで読書していた時のことです。隣に女子高生が座ってきました。ペンを出し、教科書を広げます。自宅では集中できないので勉強しにきたのでしょう。しかし、10分どころか、3分おきくらいにスマホに手が伸びてしまう。教科書に戻ったと思いきや、またすぐスマホに手が伸びてしまう。

ちなみに僕は「スマホ脳」という本を読んでいる真っ最中でした。スマホは薬物レベルの依存性があると言われています。

せっかく作業に集中しているのに、スマホの着信音が鳴るたびに「なんだろう?」「誰かな?」「良いニュースかな?」など、私たちは期待します。脳の報酬系回路で重要な役割を担うホルモンであるドーパミンは、なにか嬉しいことがあった時よりも、「期待している時」のほうが多く分泌されることがわかっています。ギャンブルやカジノに依存しやすいのも「もしかしたら次は当たるかも」という期待があるからで、実際に大当たりした時よりもドーパミンは多く分泌されるとのことです。

そして、スマホの中でも、もっとも利用頻度が高いのがSNSでしょう。Twitter、Facebook、Instagramなど。着信音が鳴っていないにも関わらず、まるで中身の変わらない冷蔵庫のように、無意識に何度も開いてしまう。「誰かつぶやいてるかな」「さっきアップした写真に”いいね”がついてるかな」など気になりますよね。

厄介なのが、単に集中力が失われるだけでなく、作業に戻るのにも数分の時間がかかるということ。これを「注意残余」と呼びます。視線は教科書に戻っても、脳はまだスマホにあるということ。

さらに面白いのが、スマホを机の上に置いたり、ポケットの中に入れているだけで、集中力が著しく低下するという研究結果。ポケットに入れていた生徒と、そうでない生徒に同じ試験を受けさせたところ、後者のほうが良い成績が出る傾向にあったとのことです。

Apple創業者のスティーブ・ジョブズが自分の子供にiPadを触らせなかったことや、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツも自分の子供が14歳になるまではスマホを触らせなかったという逸話は有名です。IT企業のトップほどそのリスクを知っているからでしょう。

僕も「このままだとヤバいな」と思い、過去に色々試しました。アプリからログアウトする、アプリそのものをアンインストールする、スマホではなくPCのブラウザから閲覧するなど色々試しましたが、数日後には元通り。あまり効果がありませんでした。

最近は、勉強したり、読書したり、なにかに集中したい時は、スマホは別室に置いておくか、カフェで勉強する時もカバンの中にしまっておきます。音楽を聴く時も「iPod」を使うようになりました。スマホで音楽を聴くのが当たり前となった時代ですが、iPodです。とにかくスマホを遠ざける自分なりの工夫です。

ランニングをする時も、音楽を内蔵できるウォークマン(ヘッドフォンタイプ)を使っています。スマホだと通知が来ると「なんだろう?」「メールかな?」「次の信号でチェックしようかな」と少なからず集中力が切れるからです。

有効な解決策としては、45分の運動を週3回おこなうこと、と「スマホ脳」には書かれています。運動の種類は問わず、心拍数を上げることが大切とのこと。

なぜ運動をすると集中力が改善されるのか。それは人間の脳のシステムは狩猟採集の時代から変わっていないから。獲物を捕まえたり、獲物から逃げたりするのには(つまり運動)、高い集中力が必要だったことから、それが「遺産」としてDNAに組み込まれているそうです。なので、運動をすると集中力が改善するそうです。

ピラティスの原則の一つに「集中」があります。エクササイズに集中することで、自分の動きや姿勢、筋肉や骨の状態、呼吸に意識を向けることができ、それが望んだ結果へと繋がる、というものです。ピラティスは心拍数も程よく上がりますし、集中力が求められるワークなので、こうした時間を取り入れてみるのは有効だと思います。

もはや現代人にとって集中力は貴重品となりました。デジタルにコントロールされるのか、それともデジタルをコントロールするのか、という時代だと思います。

著:アンデシュ・ハンセン, 翻訳:久山葉子
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